線形代数学周遊 サイドストーリー II
第12章:微積分:線形代数として について
この章では,テーラー展開は
\[
\displaystyle{f(x+α)=exp\left(\alpha \frac{d}{dx}\right) f(x)}
\]
がその本質であるということを書きました. このことについて少し述べておきます.
解析学が不要などというつもりはありませんが,理論物理の計算を行う際の対象 となる関数空間は
そもそも解析関数の空間と見なしてよい場合が多いので、収束 性云々はさておいてこういう代数的な性質の方が、
重要ではないかと思い書いたものです。
この関数空間での並進の群の表現であり、指数関数の展開が重要だということです.
この本質と、現在、ネイピア数と呼ばれている数 e の値(正体)を見抜いたの はオイラーです。オイラー20歳〜21歳のときの発見です.
20歳のEulerはその特別な数にEulerの頭文字eを使ったともいわれています.
もちろん,ヤコブ ベルヌーイが既に発見したということも言われていますが,展開を決めたのはオイラーのようです.
eは、aの次の母音ということで eとしたという話もあるようですが,20歳のオイラーが自分の名前の頭文字を取ったという説も
信じるに値すると思っています.
例えば
[1]に詳しくあります.
少なくとも,ネイピア数と呼ばれているから、ネイピアが発見したかのように流布するのは、閉口します.
その発見は,現在,数値計算の
オイラー法と呼ばれる近似解法の根源と同じものです.
オイラー法の美しさ、自然対数の底 e の不思議,その奥にある数理的な 不思議まで覗き見たのではあろうことです.
そのことは、第12章の導入部分で述べた波動方程式の解に関するダランベールとの論争を考えれば、より深まります.
[オイラー法]には数値計算のオイラー法の深みを書きました.