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俳句

 



火を入れて水が湯となる十二月

96/2/6
いとなみを見守りし月の円さかな
星々やわずかに息の白くなり
冬銀河すやすや子は眠るなり
軸黒し万年筆や冬の星
やかん鳴る静まりし夜冬の街
低くでてやさしき丸さ冬の月
冬の夜の通勤電車光ゲ流れ

96/3/9
飛ぶことを楽しめり小鳥春うらら
樹の影が春をしめして午後しずか

96/3/13
ふるさとのやま遠くなり春ちかし
さびれたるアーケード冬空青し
捨て去りし街青き山冬ゆるむ
都会へと列車動きて冬果つる

96/4/10
遠山へ一本の道あり春はじめ
黒幹に花の浮き立つ道ひとつ
行きかいし道のつづきて花あかり
散る花の影淡く落つ昼さがり
家々の建ちて平野は春の雨
春近し故郷の道に迷うなり
子の頬の柔らかきなり春うらら
泣き声の空まで届き春のなか
込み合いし車窓の闇や花散りし
花冷えやまた降り去りて終電車

96/5/5
雨後の夏の蒼、山遠くなり
動きだす田のつらなり雲映す

96/5/25
懐かしき字のゆがみし夏便り
低き視に映りし部屋去りし夏
大笑いして夏雲の遠く去る
涙する夢をみし朝夏白し
木蓮や我呼びし子の声高し

96/7/7
五月風かなしき 空の晴れ渡る
ぽっかりと空のあくなり初夏果つる
汗にじむ苦き思いの午前二時
かなしくて傘さす街の戻り梅雨
失いし硝子細工の夏の空
夏銀河宇宙の果てに浮かぶなり

96/7/25
喧騒に影しずまりて駅の夏
都会には風がのこりて盆来たる
それぞれのふるさとありて都会夏
生を歌いし人逝きて夏の空

96/8/10
知らぬ間に親となりけり夏の道
草叢に子が駆け行くやま遠し
子の姿見え隠れしもろこしのなる
日焼けし顔の幼くて育つなり
恋人でありし妻 コスモス抱くなり
僕には僕のふるさとと百日紅
ごうごうと海渡るなり夏列車
さよならは小さく言いて盆終わる
天柱立ちて僕の夏が終わるなり
96/8/16
ひまわりの見上げて空の広くなる
気遣いし蟻はたたたと塀越える
太陽の遠くへおちて枯れ浜木綿

野のはてに白雲ひとつ秋果つる 
母亡しと空仰ぎたる秋の雲 
        96/12/13
のみほしし水の甘さや冬はじめ
てのひらですくえるだけの冬の水
しばらくは秋の蒼さを見定めぬ
冬はじめよき人々に出会うなり
冬銀河宇宙のなかに眠るなり

2007年
冬家路暮らしの音の優しさや
靴音の響きて凍てし夜明け前
風呂入らば火事の遠音や祈り居る

寒ぶりのぶつ切りに切り山静か
母が来て駅前の梅咲きはじむ
暖冬や帽子を脱ぎて挨拶す
碧き実を抱きて眠る竜のひげ
砂利踏んで少しよろけて冬終わる
冬枯れの今日は昨日の続きなり
駅前に地蔵がありて春来たる

啓蟄やインターネットは地を覆い
寒月や照らすは都心一時間
昼満ちてつばきの落ちる夢を見し
しあわせは陽だまりにあり雛の居間
水温む父は四国にひとり住む
春一番やまばと風をあやつれず
寒月やここは林間3丁目

コスモスの紅の薄さと母亡きて
帰り道母子の影ひく月夜なり
観音の唇薄しすすき揺る
忘れては唇淋し秋の水
ふるさとの山に抱かれすすき枯る

2009年一月
曲線をなぞって冬の夕暮れる
代数の答えを見つけ谷の冬
論文の校正春は間近なり
底冷えや鉛筆握り式を解く
百年の問いに応えて春を見る
初春は素数が二つ踊りたる
眼を閉じて幾何の面影冬の夜
ふつふつと水が湯となる十二月
数論を思えば木々の芽の出でし

2009年5月
ふるさとの風を誘いて青もみじ

2009年12月
冬日向風もまどろみ手玉かな
母の手の皺枯れていて冬畳
手玉かな風がまどろむ冬日向

2012年
ふたつみつ素数をなぞり年明ける

2013年
木の芽吹き素数が二つ踊りたる
邨(むら)の川流れてオイラー春うらら
故郷遠く海風にふれ夏終えし
夏の路地 家人の声などいとおしく
夕凪や営みの灯淡くあり
遠雷や山裾まで伸びる道
遠雷の田の連なりて果つるなり
子の首の細きに気づき黒き南風

2014年
曲線をなぞって冬は暮れるなり
百年の問いに初空明け渡る

2015年
初春は鉛筆の芯柔らかし
変数の名付けあぐねて春の雲
故郷(くに)からの風が教える夏の果て
From far homecontry
Feel the sea wind
Fine (end) of Summer

コスモスの咲く丘ありて我があり
Hill of consmos
is there
So, I'm here

2016年
あたらしき紙を広げて初み空
吉報は突然来たる筆はじめ
数式の曲がりて下がる春の宵
内海は静かに明けて風光る

2017年
月陰に鋭き目のありガウスかな
新月やガウスの深みガウスの眼
秋晴れやガウス素数を並べては
洋梨の測地線に沿い刃を入れて
ガウス忌や素因数分解してみたり
梅雨の鬱、オイラー数を書き写し
夏果つるリーマン予想と口にして
秋日さす素数が笑う立ち話

2019年
月隠れ蛍のゆれる城の街
嫁入りを皆で祝いて夏に入る
夏至晴れて祝いに集うやしろかな
夏至の雨、降り断ちて晴れわたるなり
夏至の空 祝い高らかに響くなり
集いては、祝いを述べて初夏の空

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